eラーニング

メタ認知

2007年 12月 12日

「名選手、必ずしも名監督にあらず」 は、スポーツでよく語られる言葉だ。

名選手といわれる人たちは、概ね才能に恵まれているので、打ったり、投げたり、蹴ったり、をいとも簡単にやってしまう。 監督になったときに、選手がなぜそんなことができないのか、がわからないのだ。

さて、「何がわからないのかがわからない」という状態は教育とか学習とかの世界でよく起こることだ。

こういうのを「メタ認知」の問題というのだそうだ。

メタ認知とは、「自分は何がわかっているのかがわかっている」、あるいは「自分は何がわかっていないのかがわかっている」状態だ。

メタ認知ができていなければ、「自分は何を知らないのかを知らない」わけだから、「何を聞いていいのかもわからない」、「何を学習していいのかもわからない」 となってしまう。

こんな状態では、わからないところは何でも聞きなさい、足りないところは勉強しなさい、などと言っても何の役にも立たない。

ということで、まず 「メタ認知している」状態を作らないといけない、となる。

で、どうやるのだろう?

ギリシャの偉大なる哲学者ソクラテスは「優れた人間は自分は何も知らないということを知っているということにおいて優れているのだ」と語った。

ソクラテスは、相手に問いかけ、質問をし、矛盾を指摘することによって、相手自身が自ら自覚をし、真理を発見し、知識を創り出すことを助けた。そういう点において、ソクラテスは最も知恵のあるものとされた。 ソクラテスは、対話を通して知識を創造していったのだ。

学ぶということの原点に立ち返れば、ソクラテスのような「対話を通じてメタ認知させる」ことが出発点かもしれない。

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学ぶということは参加するということ

2007年 12月 3日

日本の子供の学力が落ちてきているのではないかと多くの教育関係者が語り、新入社員の能力が低下していると多くの企業経営者が嘆く。

教育の問題が新聞紙面を飾らない日はないくらいだが、こういうことは日本だけでもないらしく、世界中で昔からずっと関心が持たれている課題だ。

「知識や能力が低下するとひどいことになるぞ」と少なくともすべての先進国の人間が恐れている。

知識は国力にかかわることであるし、企業力にかかわることであるし、個人の生活にかかわることであるから当然だ。

ロゴスウェアの仕事の一つは、インターネットを使ってどうやって学習を支援するかだ。

そもそも学ぶとはどういうことなのか?

いろいろな教育関係者が、様々な立場で、それぞれに論じるのでどうにも難しいが、「状況に埋め込まれた学習-正統的周辺参加」という本は一つの素晴らしい概念を提示してくれる。

その考え方とは「正統的周辺参加」というものだ。

ものすごく簡単に書いてしまうと、「正統的」とは「学びとは社会とつながっていなければいけない、社会でどう役に立つのかを実感すること」だ。 「周辺」とは、「失敗してもダメージの少ないところから始めよ」ということだ。

最も大切なのが「参加」という概念だ。 参加するとは、つまり、コミュニティの一員になるということだ。 社会の一員として人とつながりながら共に学ぶということだ。

いまeラーニングの世界を見たときに不足しているのは、「コミュニティに参加しながら学ぶ」という概念かもしれない。

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eラーニングの課題

2007年 10月 1日

フェース・ツー・フェースの教育が最も効果的である、ということは事実だ。 生徒と先生が同じ時間と空間を共有する効果は大きい。

しかし、欠点もあるのだ。

  • 教室に通う時間がとれない人はどうすればいいのだ?
  • 心身の事情があり、教室に通えない人はどうすればいいのか?
  • フェース・ツー・フェースの教育はコスト(旅費、場所代、時間的ロス、など)がかかる

これらを補うために、eラーニングへの期待は大きい。eラーニングであれば、生徒が教室に通う必要がない。生徒がインターネットにつなぐとそこに教室が用意されているのだ。

しかし、未だeラーニングによって素晴らしい効果を上げているという声を聞かない。

なぜなのか?

私たちの分析によれば、それらは次のようなものだ。

  • コンテンツ制作において時間とコストがかかりすぎる
  • 教室に通うときのようなコミュニティが形成されない
  • 非同期型の一方通行のコンテンツ配信だけでは学習効果が上がらない
  • スライド説明型のコンテンツにするための素材がそもそも準備されていない

私たちはこのようなことは克服できると考えている。 Webテクノロジーの世界は日進月歩で進んでいる。最新のWebテクノロジーを駆使した次世代のeラーニングはこのような課題をすべて克服するはずだ。

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ジャスト・イン・タイム学習

2007年 9月 25日

昔、自動車工場における最善のやり方はフォードの大量生産方式だった。ベルトコンベアを使い、作れるときに大量に作り、プロセスごとに多量の在庫を持つことが最適な生産方式であると信じられてきた。

トヨタはまったく違うアプローチをとった。ジャスト・イン・タイムというコンセプトで語られるものだ。ジャスト・イン・タイムのコンセプトは「必要なものを、必要なときに、必要なだけ作る」というものだ。 これにより、トヨタは自動車業界の勝者になった。

教育の世界はどうか?

教育の世界は、フォードのベルトコンベア・システムと同様のアプローチをとっている。学校や教室に通って、知識を大量に頭の中に在庫するのだ。

ロゴスウェアは、ジャスト・イン・タイムの学習を推進したい。何か知りたいこと、知らなければいけいことに遭遇したときに、15分程度ですぐに特定のポイントについて学習できるようにしたいのだ。

eラーニングを単に教室のコストなどを削減するアプローチだととらえると大事なことを見落とす 。 ジャスト・イン・タイム学習は、従来の教育方法ではできなかったことだ。まったく新しい学習方法を提供するものだ。

ジャスト・イン・タイム学習は、「必要な知識を、必要なときに、必要なだけ学習する」ものだ。

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KEKの素粒子の研究

2007年 5月 26日

昔の人間は、夜、星を眺めながら多くの時間を過ごしたのだろう。そんな中から、星座の物語を創造し、偉大なる宇宙にたくさんの神々を見たのだろう。

宇宙の構造や仕組みについてのそれなりの知識を得ている現在の私たちにとっても、宇宙は神々しい。あのあまりにも広大な宇宙全体が一定の法則によって動き、秩序が保たれているのだと考えるとき、その法則の神がかりな力に心をときめかせる。

「私たちはどこからきたのか」という哲学的な問いに人間は何千年も前から答えようとし、それは今も変わらない。素粒子の研究は現在における哲学的探求だ。

1928年、ディラックは、量子力学と相対性理論の整合を試み、ディラック方程式を考案し、電子と反対の性質をもった粒子の存在を予言した。1932年、アンダーソンは、宇宙線の中に陽電子を発見し、ディラックの予言が正しかったことを証明した。共に後にノーベル物理学賞を受賞している。

陽電子と電子は、プラスとマイナスの関係である。一緒になると互いの存在は消え去る。ここに「粒子」に対する「反粒子」の存在が確認された。

宇宙は最初、想像を絶するような高温で高密度な小さな世界だった(らしい)。そのようなところでは、衝突が頻繁に起こり、「粒子」と「反粒子」が作られては消え、消えては作られる、ということだった(らしい)。

そこで、ビッグバンというものが起こり、宇宙が大膨張した(らしい、以下らしい省略)。 宇宙が大膨張すると、宇宙の温度が下がる。

そうなると、衝突による粒子・反粒子の生成はなくなり、あるのは、粒子と反粒子が一緒になり、消え去るのみとなる。

そうなると、この宇宙には物質は何もなくなるはずであるが、現に物質は存在している。 それはなぜか? この疑問に答えようとしているのが高エネルギー加速器研究機構(KEK)で行われている研究の一つだ。

どうも「粒子」と「反粒子」には、微妙に違うところがあるらしく、10億に1つの割合で、粒子は消えずに残るのだという。それを証明しようと、B中間子と呼ばれる素粒子を大量に作り出し、その衝突実験を行っているのが、KEK内にあるBファクトリーと呼ばれる1週3Kmにおよぶ巨大な加速器だ(将来、KEKの研究からノーベル賞受賞者が誕生したら素晴らしい)。

KEKは筑波研究学園都市にあり、縁があって、今回、素粒子実験の学習をするeラーニング教材の制作を担当させていただいた。 KEK内にある総合研究大学院大学の学生向けに作られたものなので、中身は専門的だが、ナレーションを使いスライドを説明していくタイプにしたことにより学習効果が高まる工夫がされている。

今回は専門家向けの内容だったが、機会があったら、一般の人向けにサイエンスを伝えることにWebの効果(アニメーション、ビデオ、インタラクティブ性、など)が使えたら素晴らしい。

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教育のマスカスタマイズ

2007年 5月 10日

教育の問題が新聞などに掲載されない日はない。 ある者は「競争原理を学校に導入せよ」と主張し、ある者は「基礎学力向上には詰め込み教育が必要だ」と主張し、ある者は「見守る教育が必要だ」と主張する。

考えてみれば、教育問題は、20年前も問題であったし、今日でも問題だ。 日本でも問題であるが、アメリカでも問題だし、フランスでだって問題だ。 つまり、世界中、どの時代でも問題であって未だに解決はしていないのだ。

企業などの人材開発においては、状況対応型が用いられる。 つまり、黄金の法則などなく、誰にでも通用する最適のやり方など無い、ということが前提となっている。 人は一人ひとり、それぞれ状況が違うのだから、一人ひとりに適合したやり方を選ばなければいけないという考え方だ。 考えてみればこれはもっともなのだ。 新入社員や仕事を変わったばかりの人は明確に規定された仕事を与えるべきだし、こまめに進捗を見ていかなければいけない。仕事に慣れてくれば組織の目標や価値観から自ら何を成すべきかを考えるだろう。 これらの社員には自己管理が適している。

学校はどうだろう。 生徒は一人ひとり状況が違うはずだ。 非常に学習意欲を持った生徒もいるし、その逆もいる。 学習意欲を持った生徒に詰め込み教育は間違っているかもしれない。 自ら考え、課題を見つけ、学習する能力を向上させた方が良い。 学習する習慣が身についていない生徒には訓練が必要かもしれない。 いずれにしても、一人ひとりに最適なやり方を提供してあげられれば素晴らしい。

昔、フォード自動車創業者 ヘンリー・フォードが、低コスト大量生産のモデルを語るために、「黒ならば、どんな色でもどうぞ」と言ったという話は有名だ。 昔は、単一仕様のものを低コストで大量生産するマス製品と、安くはできないが一人ひとりのために作るカスタマイズ製品の2種類があって、両方同時にはできないと信じられてきた。

今、産業界で求められているのは、マスカスタマイズ製品だ。 大量生産品のような低コストで、一人ひとりのためにカスタマイズされた製品である。 これを実現したのが情報技術だ。 アマゾンは、一人ひとりの好みを把握し、提案している。 ウェブの広告は、一人のひとりに最適なものが表示されるように日々進化している。

教育のマスカスタマイズができないのだろうか?  教育におけるITの活用とはこういうことを実現していくことだと思う。

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教育のロングテール

2007年 5月 4日

従来、扱える商品の数や抱えることのできる商品在庫の数には制限があった。 店舗や倉庫の大きさには制限があったからだ。 このような条件下では、効率的にビジネスを行うために、一定以下の販売数しか見込めない商品は取り扱いが難しかった。 上位の20%の商品が全体の80%の売り上げを占めるというパレートの法則に従うからだ。

インターネットのビジネスは、このモデルから開放された。  ビジネスを運営するコストが圧倒的に小さく、従来は採算がとれないと軽視されてきた、あまり売れない商品の販売を採算ベースに乗せることを可能にしたからだ。 この新たなビジネスモデルは、その商品売り上げグラフの形状から ロングテールと名づけられた。

ロングテールは、インターネットを語る上での重要な概念となった。

学校に目を向けてみよう。  国語、数学、英語、地理、世界史、日本史、生物、物理、化学、音楽、美術、などのカリキュラムが並ぶ。 概ねどこの学校も同じだ。 特別に素粒子に関心にある生徒、特別にコンピュータプログラミングに関心のある生徒、特別に考古学に関心のある生徒、特別に草花に関心のある生徒、特別に中国語に関心のある生徒、特別にシェークスピアに関心のある生徒、に対して授業が行われることはない。 彼らは少数派だからだ。少数の生徒のために授業ができるように先生を取り揃えておくことはできない。 これが学校の制限だ。

ロングテールの概念で考えるならば、インターネットを活用すればこの制限はかなり取り除けるのではないだろうか。 全ての学校に、全ての種類の先生を配置しておく必要はない。 インターネットは地理的な制約を取り除いてくれる。  シェークスピア文学を教える先生がどこかにいて、ネット上で授業を行えばいいのだ。 関心がある生徒が全国から集まる。 各学校には、そのような生徒は一人しかいないかもしれない。 でも、日本中にはそれなりの数の生徒がいるはずだ。

今、学校にはインターネット回線が引かれ、多数のパソコンが配置された。 多くの学校で行われていることは、グラフが綺麗に描けてよかった、ホームページが作れてよかった、の類で有効に活用されていない。

もし、生徒の個性を伸ばそう、多様性を尊重しよう、ということならば、学校には是非、生徒個々の関心のある分野に対して学校間の壁を越えた授業を行ってもらいたい。 インターネットがあればそれは可能だ。 POWER-LIVEのような製品を使えば、地理的に離れた教室をリアルタイムで結んで映像も声も共有した授業ができる。 教育もロングテール化できるのだ。

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療養中の子供が自宅や病院から授業に出席できたら

2007年 2月 9日

もうずいぶん昔のことだが、脚の骨折のために、長いこと病院のベッドで過ごさなければならなかったことがある。 入院したことがない人はわからないだろうが、とても社会から隔離されてしまうのだ。 私にとっては歩けないことだけが不自由で、頭は完全に機能していたのに、仕事ができなかった。

病気やけがで、家や病院で療養中の生徒もきっと同じ思いだ。 いろいろな事情で登校できない子供はたくさんいる。 私が治療のために仕事を中断することにとても不安を感じたように、子供にとって授業に出席できず勉強に遅れてしまうのはとても不安なはずだ。

学校の授業に自宅や病院から出席できたらどんなに素晴らしいだろう。 授業に追いついていけるし、なにより、友達に会えることが素晴らしいではないか。 想像するととてもワクワクする。 生徒たちの笑顔が浮かぶ。

ロゴスウェアで開発しているテレビ会議システム POWER-LIVE には、まだそのような活用事例がないが、いつの日か必ず実現したい。 今、学校にはインターネット回線が敷かれている。 パソコンも備え付けられている。 パソコンとインターネット回線さえあれば動作するPOWER-LIVEなら、これは現実の世界だ。 POWER-LIVEは、茨城県取手市の教育委員会が推進するICT活用授業の一環として導入され、試験的な運用が始まっている。 本格的な運用は来年度以降であるが、私たちの夢が実現できたら素晴らしい。

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