2007 年 6 月 のアーカイブ

捨ててもいいものは何か

2007 年 6 月 7 日 木曜日

仕事のことやその他のことでも人はそれぞれ思い悩むものである。

私はよくトレードオフのことについて話す。いろいろ思い悩んだときは、何を捨ててもいいかをはっきりさせておくほうが良いと考えるからだ。

昔、巨人の星というTVアニメがあった。主人公 星飛雄馬は、父 一徹から野球の英才教育を受けて育つ。子供の頃から明けても暮れても野球一筋で育てられ、プロ野球巨人軍に入団する。その中に、ライバルのオズマから「お前は野球人形だ」と言われ、ショックを受ける話がある。自分は野球ばかりで、他の人が体験するような青春がない、と悩むのだ。

一流のアスリートの多くは、必ず何かを犠牲にしてきた。 女子ゴルフの横峰さくらや宮里藍にしても、卓球の福原愛にしても、彗星のごとく登場した男子ゴルフ 15歳の石川遼にしても。

それは、大きな経済的な負担であったかもしれないし、勉強時間を犠牲にしたかもしれないし、他の子供と楽しく遊んだりする時間を削ったかもしれないし、恋愛をすることを犠牲にしたかもしれない。

このような犠牲を一切払いたくないと考えれば、間違っても彼らのように若くしてアスリートとして成功することはできない。彼らはみんなまだ若い。しかし、自分にとって何を達成することが重要で、何は捨ててもいいかをはっきり理解していることにおいて彼らは紛れもないプロだ。

私たちのまわりには両立させることができない多くのことがある。自由を求めれば、責任を回避することができない。何かを成し遂げようとすれば、他の時間を削らなければならない。収入をあげようとすれば、仕事のプレッシャーから逃げられない。成功をしようとすれば、失敗のリスクがつきまとう。

単純なことである。両方求めることはできないのだ。「自由でありたいが、責任は取りたくない」、「大きな仕事の成果を上げたいが、趣味にもたくさんの時間を使いたい」、「収入は上げたいが、楽な仕事がいい」、「成功はしたいが、失敗はしたくない」などはありえないのだ。

人生をどう選択するかは一人ひとりが考えることだ。何をあきらめてもいいのかをはっきりさせれば、そう難しいことではない。

そのことを理解するだけでも、人生はずいぶん気が楽になるように思う。

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出エジプト記

2007 年 6 月 5 日 火曜日

旧約聖書の中に納められた物語の中でも、出エジプト記はとりわけドラマティックで面白い。

当時多くのイスラエルの民は、エジプトで奴隷となって暮らしていた。ある日、神はモーセに命じた。イスラエルの民(その数60万人以上)をエジプトから脱出させ、神がイスラエルの民に約束した地、カナンに導くようにと。

この旅の途中、イスラエルの民はあまりにも身勝手であった。のどが渇いたといっては愚痴を言い、腹が減ったといっては文句を言い、肉を食いたいといっては不平を言う。その度ごとにモーセは、神に許しを請い、神は奇跡を起こし彼らを助けた。

しかし、彼らが神との契約、十戒をそむくようになり、神の怒りは頂点に達した。モーセも燃え上がった怒りの中で、十戒が刻まれた石の板を叩き割り、神に背く者たちを処刑した。しかし、イスラエルの民の全てが神の怒りによって滅ぼされることを望まず、再び神に許しを請うた。

いよいよカナンの地を目前にすると、カナンの地に住んでいるものたちとの戦いにおびえた。「我々はエジプトの地で死んだほうがよかったのに、なぜ我々を連れてきたのか」とモーセを責めた。それは神を再び怒らせ、それから40年の間、荒野をさまようことを命じられた。

40年におよぶ放浪の旅の中で、神に不平を言った人たちは全て死に、イスラエルの新しい世代は、荒野で羊を飼うことに慣れ、敵と戦うことに巧みになり、鍛錬され、信仰も強くなった。 そして、遂に神がイスラエルの民に約束した地、カナンに入るのである。

出エジプト記は、3つのことを教えてくれる。

  • 第一に、人間の欲求には限りがないこと。あることが解決すると、別の不平・不満が生まれる。それが解決されると、更にまた別の不平・不満が生まれる。 ものごとを改善することが新たな不平・不満を生むというパラドックスがあることを教えてくれる。
  • 第二に、人の考えが変わるには、大変な時間がかかること。 エジプトで何世代にもわたって奴隷の状態にいたイスラエルの民は、何をせよ、こうせよと命令されることに慣れた臆病な民になってしまっており、それが変わるのに、40年におよぶ放浪が必要であった。
  • 第三には、モーセが示したリーダーとしての行動である。彼はどんなときにも、神を信じ、イスラエルの民のために神に祈った。しかし、戒律を破った者に対しては、断固とした処分を行った。十戒の刻まれた石には、人を殺してはいけない、と確かに記されていたはずである。しかし、イスラエルの民をカナンの地まで導く旅を続けるためには、彼はそうしなければいけなかった。アメリカ人にはおそらく旧約聖書の物語は身体に染み込んだものであり、彼らのリーダー像というのは、たぶんにモーセの影響があるのかもしれない。

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人に魚のつり方を教えれば、一生食うに困らない

2007 年 6 月 3 日 日曜日

経済同友会の新しい代表幹事に選出されたのは、桜井正光氏である。 桜井氏は、1996年から11年間リコーの社長を務め、2007年4月にリコーの会長に就任している。

新聞に掲載されていたエピソードから

入社後に配属されたのは、事務機器工場の原価管理課。 課長の最初の指示は、「1年間、ぶらぶらしてなさい」。 最初は「楽なもんだなあ」と思っていたが、すぐに「仕事がないほどつらいものはない」と気付く。しばらく憂うつな日々を送っていたが、あることに思い至る。 原価管理課に何が期待されているのか、を工場内を歩き聞いてまわった。そしてその答えを設計部門で発見した。機種ごとに違っていた部品を整理し、既存部品が使えるようにした。開発設計のコストが下がり、生産性が高まった。「上司の指示がなくても、お客さまが誰なのかが分かれば仕事は見つかると勉強した。」 後に、当時の課長に「お蔭さまで仕事とは何か、顧客満足とは何かがわかりました」と礼を言うと、元上司は「ようやく分かってくれたか」と笑った。

仕事を始めて、最初に学ぶべきことは、主体的な行動である。 何をすべきかが明白な時代はよかった。 しかし、今、変化も速く、大きくなっているので、誰にも明白に次が読めない。 各々が動き、各々が考え、各々が発見するしかない。 ロゴスウェアが、価値観の一番目に、「主体性を発揮する」を掲げているのはそのためだ。

この行動哲学を確固たるものにするためには、まだまだ多くの時間がかかる。 多くの日本人にとって、主体性を発揮することは簡単なことではない。

中国の格言から

人に魚を与えれば、今日の飢えをしのぐことができる。 人に魚のつり方を教えれば、一生食うに困らない。

あなたは最初、自ら何かを見つけだし、何かを創造できないで苦しむかもしれない。実際、それができるようになるには時間がかかるが、人生という長いスパンで考えれば些細なことである。

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