元ソニー取締役 黒木靖夫氏が7月12日亡くなられた。74歳であった。
黒木氏は、工業デザイナーとしてキャリアをスタートした。 SONYのロゴデザインを手がけたのも黒木氏だ。その後、数々のソニーの商品企画に携わった。 ウォークマン開発のプロジェクトをリードし、「Mr. ウォークマン」と呼ばれた。
黒木氏の才能を見出し、黒木氏に数々の重要プロジェクトを委ねたのは、ソニー創業者 盛田昭夫氏だ。たんなる上司と部下の関係を超えた強い信頼関係で結ばれていた。
何年か前に黒木氏の著書「大事なことはすべて盛田昭夫が教えてくれた」を読んだ。盛田昭夫という人間に強い興味を抱いた。盛田昭夫自身の著書「MADE IN JAPAN」も読んでみた。「ソニー ドリーム・キッズの伝説」という本も読んでみた。更に強い興味を持った。
魔法のような説得力を持ち、天才的なマーケティング能力を発揮し、あらゆる人を魅了し、燦燦と輝き、まばゆいばかりのエネルギーを放ち、際限ないほどの好奇心を持ち、20世紀に最も影響力があった世界の経済人20人にただひとり選ばれた日本人、それが盛田昭夫だ。
かつでこの国にこのような信じられないほどにスケールの大きな人間がいた。戦後、ベンチャー企業として創業されたソニーを世界企業へと育てた。
日本はもう一度ソニーのような世界企業を作り出せるのか? それは難しいのか? それは、もう盛田昭夫がいないからなのか? もう黒木靖夫氏のような働き方をする社員がいないからなのか? あるいは、その両方か?