設立からの10年とこれから


ロゴスウェア株式会社を設立したのは2001年7月。ちょうど10年が経ちました。本当に何も無い状態からのスタートでした。売る製品もゼロ、顧客もゼロ。1年も経たないうちに会社の銀行口座の預金残高もゼロになりました。借金と自分の預金を崩して社員の給与を支払う、そんなスタートの1年でした。


これでは会社が立ち行かないので、2年目には、収入を得るために、受託でデジタルコンテンツ制作やシステム開発を始めました。何の実績も無い自分たちに仕事を依頼してくれた人たちに今でも大変感謝しています。基本的にどんな仕事でもやりました。仕事の内容は重要ではありませんでした。この時期、自分たちにとって仕事を得ることは本当に難しかったのです。そして、どんな仕事にも感謝したのです。

自分たちの製品の開発に着手できたのは3年目からです。相変わらず十分な資金はありませんから、受託請負仕事を続けながら、時間をやり繰りしての製品開発です。この状態を何年も続けました。少しずつ、製品を増やし、製品を強化し、少しずつ、少しづつ、製品売上の比率を高め、受託請負開発の仕事の割合を減らしていきました。

この何年もの間、収入を得るための受託請負仕事と製品開発のバランスを取ることが最大の経営課題でした。受託請負開発をすれば収入は増えますが、製品開発が停滞し将来がありません。製品開発に専念しすぎると、未来に到達する前に死んでしまいます。

このバランスをとり続けることは、ストレスもかかり、忍耐のいることでしたが、自分たちは、ついに、受託請負開発から、製品開発の会社に変わることができました。会社の設立からの10年を総括するとこんな感じです。

起業家 にとって一番怖いことは、競合相手ではありません。それは自分自身です。自分自身を奮い立たせるエネルギーが枯渇することです。会社を経営していくことは、想定外のことの連続です。どんなに経験を積んだ人にとっても、これまでの仕事では体験しなかった問題に直面します。答えの分からない 問題です。自分に向き合い、一人で決断しなければならない問題です。

絶対に正しいとは言い切れない場所に、絶対に正しいとは言い切れないやり方で、多くの社員を導かなければならない仕事です。そのような仕事は、エネルギーが尽きてできるものではありません。このエネルギーを失った時に、経営者は職を辞すべきです。

幸いにも自分は今の状態に満足していません。達成感というものもありません。むしろ、やり残した感がたくさんあります。だから、今しばらくは、エネルギーを失わずに進めそうです。

このロゴスウェアという会社を、世界で、グローバルな環境で戦える会社にしてみたいのです。世界を相手に事業をする喜び、やり甲斐を社員一人ひとりが味わえるようにしてみたいのです。それがこれからの仕事です。

技術中心に展開するのか、市場中心に展開するのか


資源の限られたベンチャー企業にとって(そしておそらくは資源があったとしても)、事業の最初の着地点に確実に芽を出すことは難しいことです。

私たちは多くの新規事業が失敗していくことを目にしています。多くの場合は安っぽい安易なアイデアであるがために、そしていくつかは単に運にめぐり合えないがために。

事業の芽を出す着地点をどこにすべきか、いつ着地すべきか、どのように着地すべきか、それを確実に知る方法はありません。誰かが答えを教えてくれるわけでもありません。調査をすれば分かるというものでもありません。ただただ他の誰よりも曇りの無い歪みの無いレンズを通して市場を見、自分の知識と経験を総動員し、且つ勇気を振り絞り導き出した直観的な答えに全てをかけるしかありません。

そのようにしてスタートする新規事業の内いくつかの種は芽を出します。生き延びる権利を得ます。しかしまだ小さな生命体です。これをあたり一面を覆いつくす勢力にするには更なるチャレンジが必要です。

どのように展開させるべきか?

大きくは二つのアプローチが考えられます。 つまり、技術中心に展開するのか、市場中心に展開するのか。

富士フィルムが化粧品事業に乗り出しているのは、技術中心に展開する好例です。写真フィルムを開発する上で蓄積された色あせ防止ための「抗酸化技術」、細かな機能や安定性を高める「ナノテクノロジー技術」が化粧品のコラーゲンを守ることや機能アップに応用できるためです。

マクドナルドは、市場中心に展開する好例です。朝マック、ランチタイムのセット、午後のティータイムにマックカフェ、お一人様向けの簡単な夕食ならチキンメニュー、など。ターゲットとする顧客、市場を面で完全におさえる戦略です。

技術を中心とする展開は製品は作りやすいかもしれません。しかし、販売・マーケティングに大きな負担がかかります。 一方、市場を中心とする展開は既存顧客に売っていけるため、販売・マーケティングの負担は下がります。しかし、まったく基盤が無い製品を開発しなければならない場合もあり、製品開発に大きな負担がかかります(上のマクドナルドの場合は簡単そうだが)。

どの方法をとるべきか、それが戦略です。

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時間配分分析


何かが達成できないときに、まず問うべきことは、それに適切な時間を割けているのか、ということだ。 

何かを成し遂げることができないときに、「時間がない」というのは簡単だが、そう言ったところで何かが達成されることはない。何かを達成しようと思えばやはり時間をかけるしかないのだから、私たちが真剣に考えるべきことは、どうやってその時間を作るかということに違いない。  

自分は何にどれくらいの時間をかけているのだろうか? 計測したことがあるだろうか? ほとんどの人はそのような計測をしたことがないかもしれないが、計測をしてみると予想外の結果になることが多い。 営業が顧客に向き合っている時間を十分とれていなかったり、プログラマがコードを書いている時間が十分でなければ、高い成果を望めるわけがない。 

ロゴスウェアでは、このような個人ごとの時間配分の数字を月ごとに計測して、みんなで情報共有している。 その仕事本来の価値を生む仕事(営業担当なら販売のために顧客に対応する仕事、製品開発者なら新機能を製品に組み込む仕事)に正しく時間を割けているのかはすごく気になるからだ。 

多くの会社では、お金の支出をモニターして無駄を省こうとしているかもしれないが、時間に注目して無駄を削っていった方がより効果的だ。 なぜならば、お金の場合は、無駄金があったからといって、必ずしも正しいことに使われるお金の額が少なくなることはないかもしれないが、時間の場合はそうはいかない。 時間は完全に有限だから、それが無駄に使われれば、正しい行為に対する時間が確実に削られる。

時間が正しく配分されていないとき、それは個人のせいではないことが多い。 私たちは個人を責めるために時間配分を分析するのではない。 多くの場合は、何か組織的な仕組みに欠陥があるのだ。 本来の仕事とは関係のない雑務があったり、不必要な会議があったり、なくても別に困らないような文書を書かせていたりするのだ。 時間配分分析をすれば、そのようなものが簡単に発見できる。 それらを改善しながら組織は強くなるのだ。

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ギリギリのところのバランス


誰が言ったのかは覚えていないが、粋とは崖っぷちぎりぎりの所を歩くことであり、崖を落ちてしまえば下品となり、崖から遠ざかれば野暮となる、のだそうだ。 ギリギリのところにだけ粋があり、そのバランス感覚の優れた人が粋な人ということなのだろう。

経営を成り立たせているものもギリギリのところのバランスだ。

成功を目指せば何かにフォーカスを当てて資源を投入しなければならないが、それは同時に失敗の確率も高める。 

より良くしようと思えば変革しなければいけないが、変革は築き上げた何かを崩壊させてしまう危険も高める。

経営はいつでも、このようなジレンマの中にある。 そしてそのジレンマの中を、平衡感覚を研ぎ澄ませながら進むしかないのだから、いつだって誰にとっても難しいのだ。

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あらゆるものにはプラスとマイナスがある


CP対称性の破れを説明する「小林・益川理論」によって、ノーベル物理学賞を受賞した一人、小林誠氏はつくば市の住民でもあり、つくば市の名誉市民となった。

家の本棚に昔買った小林誠著「消えた反物質」があるので読み直してみたが、相変わらずよくはわからない。 ただ、あらゆるものには正があれば負があり、プラスがあればマイナスがあるように、物質には反物質があるのだといわれれば、そうに違いないと思う。

今、自分たちは物質の世界に住んでいて、反物質など見ることも感じることもできないわけだが、そういうことに思い至る物理学者という人たちには感心する。

あらゆるものにはプラスとマイナスがあるのだ、ということは宇宙を支配する真理のように思える。

そういうわけだから、あらゆる経営上の手法にもプラスとマイナスがあるのだ。 だいたいにおいて、経営や人事などのコンサルティング、あるいはそういう書物が紹介する経営手法などはプラス面ばかりが強調される。 XXX社は○○を取り入れて成功した、などの成功例だけが語られ、失敗例が語られることはない。 

あらゆるものにはプラスとマイナスがあるのだから、慎重になるべきなのだ。

報酬制度、人事評価制度、目標管理制度、・・・など経営の根幹を成すような制度の設計には、プラス面とマイナス面の両方を熟知した上で臨んだほうが良い。

経験があり、よく知っているやり方を、少しの改良を持って取り込むのが良い。 そうしないと、マイナス面が出てきたときに制御不能となるだろう。 自分が使ったこともないような道具をいきなり本番で使うな、ということだ。

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