仕事のことやその他のことでも人はそれぞれ思い悩むものである。
私はよくトレードオフのことについて話す。いろいろ思い悩んだときは、何を捨ててもいいかをはっきりさせておくほうが良いと考えるからだ。
昔、巨人の星というTVアニメがあった。主人公 星飛雄馬は、父 一徹から野球の英才教育を受けて育つ。子供の頃から明けても暮れても野球一筋で育てられ、プロ野球巨人軍に入団する。その中に、ライバルのオズマから「お前は野球人形だ」と言われ、ショックを受ける話がある。自分は野球ばかりで、他の人が体験するような青春がない、と悩むのだ。
一流のアスリートの多くは、必ず何かを犠牲にしてきた。 女子ゴルフの横峰さくらや宮里藍にしても、卓球の福原愛にしても、彗星のごとく登場した男子ゴルフ 15歳の石川遼にしても。
それは、大きな経済的な負担であったかもしれないし、勉強時間を犠牲にしたかもしれないし、他の子供と楽しく遊んだりする時間を削ったかもしれないし、恋愛をすることを犠牲にしたかもしれない。
このような犠牲を一切払いたくないと考えれば、間違っても彼らのように若くしてアスリートとして成功することはできない。彼らはみんなまだ若い。しかし、自分にとって何を達成することが重要で、何は捨ててもいいかをはっきり理解していることにおいて彼らは紛れもないプロだ。
私たちのまわりには両立させることができない多くのことがある。自由を求めれば、責任を回避することができない。何かを成し遂げようとすれば、他の時間を削らなければならない。収入をあげようとすれば、仕事のプレッシャーから逃げられない。成功をしようとすれば、失敗のリスクがつきまとう。
単純なことである。両方求めることはできないのだ。「自由でありたいが、責任は取りたくない」、「大きな仕事の成果を上げたいが、趣味にもたくさんの時間を使いたい」、「収入は上げたいが、楽な仕事がいい」、「成功はしたいが、失敗はしたくない」などはありえないのだ。
人生をどう選択するかは一人ひとりが考えることだ。何をあきらめてもいいのかをはっきりさせれば、そう難しいことではない。
そのことを理解するだけでも、人生はずいぶん気が楽になるように思う。