「ヒストリーチャンネル」という衛星放送テレビチャンネルがある。私の家ではケーブルテレビでこれを視聴できるのだが、質の劣化が止まらない民放地上波テレビよりずっと面白いかもしれない。
ヒストリーチャンネルの中の番組「ザ・ユニバース ~宇宙の歴史~」を見ていたら宇宙線の話をしていた。
宇宙の中は「宇宙線」と呼ばれる高エネルギーの放射線が飛び交っていて、地球にも降り注いでいる。 生物の進化をもたらしたものは宇宙線なのだそうだ。 宇宙線は時にDNAに突然変異を発生させる。 このおかげで生物は進化をしてきたのだという。一方で、宇宙線は細胞を傷つけ、ガン細胞を作り出す原因にもなるらしい。
人間一人ひとりとか、そういう個体にとっては、宇宙線は害である。 ところが、人類とか、そういう全体の単位で見てみると、宇宙線は益であり、無くてはならないものなのだ。
これは面白い。 一人ひとりにとって悪いものは、その集合体である全体にとっても悪いはずだ、と単純に思いがちだが、そうとは限らないということだ。 同じように、一人ひとりにとって良いものが、全体にとっても良いとは限らない、ということもあるだろう。
よくよく考えてみれば、このようなことは社会の中ではよくある。 有名な経済学の本の冒頭にも、「貯蓄は個人にとって美徳であるが、社会にとっては悪である」と書いてある。
しかし油断をすると、私たちは「個人の命題」と「全体の命題」をごちゃ混ぜにして議論しがちだから気をつけよう。
例えば、地球環境の問題とか、戦争の問題とか、格差の問題とか、そういうものは全体の命題だから、個人の事情や正義感のようなもので議論すると間違った答えを導き出してしまう危険があるだろう。 私たちが社会全体や組織全体を良くしたいのなら、そういうことについて良く考えるべきだ。