戦略理論というもの


ソニー プレイステーションの生みの親、久夛良木健氏が6月19日をもってSCEの取締役から退任した。事実上、PS3の販売不振の責任をとっての辞任となる。

ソニーは、ここ数年、大きな二つの失敗を犯している。ウォークマンがアップル iPODに敗れたこと、PS3が 任天堂Wii に敗れたことだ。

この二つの事例は、おそらくこれから何年、何十年にわたり、経営戦略理論やイノベーション戦略理論の世界で繰り返し引き合いにだされるのであろう。

クレイトン・クリステンセンが提唱する破壊的イノベーション理論に照らし合わせれば、ソニーは、MD、メモリースティック、音楽事業、などの既存ビジネスを守ろうとするがために、ウォークマンは破壊的なイノベーション iPOD の前に敗れ去った、となる。ソニーはiPODのような製品・サービスを開発する全ての要素(小型薄型のモノを作る技術、インターネットビジネスのノウハウ、音楽コンテンツ、・・・・)を持っていて、それらは間違いなくアップルよりも格段に優れていたのだから、そのショックは大きかったのかもしれない。

PS3は3次元グラフィックスの性能向上にこだわった。製品の性能競争により、性能は顧客の満足度をいずれ大きく超える。そのときに、新市場を創造する破壊的イノベーションに敗れ去る、という理論も多くの人が理屈としては知っているものだ。Wii がPS3を置き去りにしてゲームの世界に新市場を開拓していく様は、まさにこの理論の通りだ。

それならば、なぜこれらのことは事前に警告されないのか?

破壊的イノベーション理論が書かれたクレイトン・クリステンセンの書物は世界的なベストセラーで、経営に携わる者、マーケティングに携わる者、イノベーションに携わる者にとってはあまりにも有名な理論だ。当然、優秀なソニーのスタッフたちがそれについて無知であることなど絶対にない。

既に起こってしまったことを振り返って見れば、いろいろな理論に照らして説明するのは簡単だ。ただ、理論を事前に活用し、未来をコントロールするのは極めて困難なのだ。

たぶん、戦略理論とはその程度のものだ。戦略理論は大変面白く、自分もこれまでに多くの書物を読んだし、たぶんこれからも読む。戦略理論がまったく役に立たないということは絶対にないが、理論を振りかざして経営を語る人には非常に違和感がある。

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