大事なことは中を調べよ


前の会社に勤めていて、まだエンジニアをしていた頃に聞いた話である。 その頃は、ノートPCを設計するのはまだ技術的にかなり難しかった。 どうやって放熱するのか? どうやればプリント基板を小さいスペースに押し込めるのか? どんな部品を使うと小さくできるのか?  どうやって使っていない部品への電源供給を停止するのか?

ある時、社員のある者が台湾の会社との打合せのために出張した。 そのとき、ノートPCの新製品を持参した。 その製品はかなりの出来栄えで、とても小さく、薄く、そして電力消費が少なかった。

会議は長時間に及んだため、昼休みをとり部屋に戻ると、なんと持参したノートPCが、その台湾の会社の者たちによって分解されていた。 「何をしてるんだ?」と問い詰めると、「どうやって設計されているのか中を見ていたんだ」と事も無げに答えたと言う。

今回のメッセージは、「他人のものを勝手に分解せよ」 ではない。 「大事なことは中を調べよ」である。

今、あらゆることが複雑になってしまったので、全てを分解して理解しようとしていたら、それで一生終わってしまうかもしれない。 自動車がどういうメカニズムで走るかを知らなくても特に不便でもなく、テレビがどういうメカニズムで映像を映すのかをしらなくても何も困りはしない。 ただ、自分にとって大事なことだけは、ブラックボックスにしないで、中を調べた方が良い。

技術者はビジネスというものをブラックボックス化しすぎる。 マーケティングやセールス担当者はテクノロジーをブラックボックス化しすぎる。 以前は、これでも通用したかもしれない。 なぜならば製品は単一機能で動き、ビジネスモデルは単純であった。

今や製品やサービスはネットワーク化している。 特にIT系の製品はそうなのだ。 他社の製品と自在に連結したりもする。 そうなってくると、ビジネスモデルも複雑化する。 昔のように、単体製品に値段をつけて店で売ればいいというわけにはいかない。 どこに収益を生む仕掛けを作っておくかは、テクノロジーを知らずして語れない。 逆に、ビジネスモデルを考慮せずに製品を開発しても価値を生み出さない。

大事なことは中を調べよ

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