教育のマスカスタマイズ


教育の問題が新聞などに掲載されない日はない。 ある者は「競争原理を学校に導入せよ」と主張し、ある者は「基礎学力向上には詰め込み教育が必要だ」と主張し、ある者は「見守る教育が必要だ」と主張する。

考えてみれば、教育問題は、20年前も問題であったし、今日でも問題だ。 日本でも問題であるが、アメリカでも問題だし、フランスでだって問題だ。 つまり、世界中、どの時代でも問題であって未だに解決はしていないのだ。

企業などの人材開発においては、状況対応型が用いられる。 つまり、黄金の法則などなく、誰にでも通用する最適のやり方など無い、ということが前提となっている。 人は一人ひとり、それぞれ状況が違うのだから、一人ひとりに適合したやり方を選ばなければいけないという考え方だ。 考えてみればこれはもっともなのだ。 新入社員や仕事を変わったばかりの人は明確に規定された仕事を与えるべきだし、こまめに進捗を見ていかなければいけない。仕事に慣れてくれば組織の目標や価値観から自ら何を成すべきかを考えるだろう。 これらの社員には自己管理が適している。

学校はどうだろう。 生徒は一人ひとり状況が違うはずだ。 非常に学習意欲を持った生徒もいるし、その逆もいる。 学習意欲を持った生徒に詰め込み教育は間違っているかもしれない。 自ら考え、課題を見つけ、学習する能力を向上させた方が良い。 学習する習慣が身についていない生徒には訓練が必要かもしれない。 いずれにしても、一人ひとりに最適なやり方を提供してあげられれば素晴らしい。

昔、フォード自動車創業者 ヘンリー・フォードが、低コスト大量生産のモデルを語るために、「黒ならば、どんな色でもどうぞ」と言ったという話は有名だ。 昔は、単一仕様のものを低コストで大量生産するマス製品と、安くはできないが一人ひとりのために作るカスタマイズ製品の2種類があって、両方同時にはできないと信じられてきた。

今、産業界で求められているのは、マスカスタマイズ製品だ。 大量生産品のような低コストで、一人ひとりのためにカスタマイズされた製品である。 これを実現したのが情報技術だ。 アマゾンは、一人ひとりの好みを把握し、提案している。 ウェブの広告は、一人のひとりに最適なものが表示されるように日々進化している。

教育のマスカスタマイズができないのだろうか?  教育におけるITの活用とはこういうことを実現していくことだと思う。

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