人件費の変動費化


右肩上がりで成長を続けた日本経済は、90年代に入ると失速してしまう。 売上が上がったり、下がったり、変動するようになってしまった。

この変動に多くの日本企業が耐えられなかった。 固定費が目立ち、赤字企業が続出してしまった。

多くの企業は体質改善を実施し、「固定費の変動費化」を図った。

固定費となってしまう正社員の数を必要十分な規模まで下げ、その他の人件費はパート、アルバイト、派遣、請負、へと切り替えた。

この構造変化がいま格差社会と呼ばれる社会問題となっている。

格差問題は放置してよい問題ではないが、かといって、企業がもう一度固定費を上げることも難しい。

「人件費の変動費化」を一部の人間にだけ押し付けてしまわない仕組みが必要だ。

例えば、会社の役員報酬や役員賞与を変動費化したらどうだろうか。毎月の月次決算や四半期ごとの業績をもとに役員報酬額や役員賞与の額を調整したらどうだろうか。

理にかなっているように思えるのだが、いまの税法はその実施を拒んでいる。

役員の報酬額は毎月同じ額を支払わないと特別に税金が課される。 役員賞与などはそもそも損金不算入だ。つまり、役員賞与を支払うことには税金が課される。 (平成18年度の税制改正で役員賞与は事前に決めた定額であれば損金扱いできるようになったようだが、事前に決めた定額であるならばそもそも賞与ではない。) そんなわけで、役員賞与をもらっていない企業経営者も多いと思われる。

このあたりの税制はもっと柔軟にできないものなのか。

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内部留保金課税


税法の一つに、同族会社に対する内部留保金課税というものがある。

企業は1年間事業を行って得た利益を、期末に「株主に配当する」、「役員賞与を支払う」、「会社内に内部留保する」の方法で処理するわけだが、このうちの「会社内に内部留保する」ということに対して税金を課す制度だ。

面白いことに、内部留保金課税は、同族会社に対してのみ適用されている。税法も毎年変わって複雑なのだが、適用対象の同族会社とは、いまのところ「1株主グループによる持ち株割合が50%を超える会社」ということになっている。 多くの未上場中小企業がこの範疇に入る。

経営の本来の姿からすれば、事業から得た利益を会社に内部留保させ、会社の財務体質を強化させるのは正しい行動に思えるのだが、税法からするとそういう行動に対しては税金を課すということになっている。

なぜ課税をするのかと言えば、「資本と経営が分離されていない中小企業の経営者は、利益を自分に配当すると税金がかかるので、会社の中に留保させて税金逃れをする」と税務署は考えるからである。

しかし、多くの企業経営者にとってこれは大変違和感のある考え方に違いない。

会社の安全性と持続的成長を願い、配当や役員賞与にお金をまわさず内部留保を優先させる企業経営者は多いに違いない。

そのような世の中の声を反映して、平成19年度の税制改正では、とりあえず資本金 1億円以下の会社は適用除外になった。 ロゴスウェアのようなベンチャー企業にとっては望ましいことだ。 しかし、これを悪用する人たちもいるのだろうなあ、と思うとすっきりしない。

よくニュースなどでも会社の区分をするのに、大企業、中小企業 というように会社の規模を属性とした区分がなされる。 ときどき、その区分は何か雑すぎないかと感じることがある。 特に、中小企業にはいろいろな種類がありすぎる。 完全な個人経営もあれば、真のベンチャー企業もあり、家族だけで経営する会社もある。 何かもっとうまく区分する方法はないのだろうか?

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ソフトウェア資産


今年の5月くらいにアプリックスという携帯用ソフトウェア開発会社が76億円もの特別損失を計上したことがあった。 これにより、今期7億5,000万円の黒字予測が、一転して75億円の赤字予測になった。

簡単に言えば、自社開発したソフトウェアを76億円の価値があるとして資産計上していたが、どうもすぐに売れそうもないということで一気に費用化したもののようだ。

ソフトウェアの開発は、企画、設計、コーディング、・・・と進んでいくが、規則正しく工程が進むわけでもなく(前工程に戻ったり、あるいは最初の工程に戻ったりは頻繁に発生する)、目に見えるものでもないだけに、どこまでが研究開発費としての経費なのか、どこからがソフトウェアの資産なのかがはっきり定義しづらい。

一応、「製品マスターの完成」と「販売の意思」を持って線引きをすることになっているが、やはり曖昧だと言わざるを得ない。損益計算書上で利益が上がっているように見せたいのか、見せたくないのかという経営者の意思で、操作ができてしまう。

財務諸表に記載される利益は解釈次第と言われるが、普通に考えれば何とも釈然としない。会計学としてはどう解釈されるのか知らないが、少なくとも経営者と株主の視点で見れば、何かすっきりしない。

ソフトウェアの場合、開発したものが将来の売上につながるかどうかなんてさっぱりわからないのだから、これらのものは必要最低限のところだけ資産とし、その他の多くは研究開発費として経費計上すべきであると思う。 つまり、少額のソフトウェア資産と多額の研究開発費用となる。

いくつかのベンチャー系上場会社の財務諸表を見てみた。勿論違法ではない。しかし、気に入らない会計をしている会社はある。これは信念の問題だ。

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二重振子


二重振子の動きを見てみよう。

普通の振子は、右から左へ、左から右へ、と実に単純な運動をするが、振子を二つつなげただけでこんな予測困難な動きになるのだ。

同じ動きを2回させるのも難しい。スタート位置のちょっとのズレが動きに大きな変化を与えるのだ。

こういうのをカオスというのだそうだ。

「ほんのわずかな初期条件の違いが予想もつかないほど大きく違った結果を生む現象、個々の現象は決定論的に予測できても、総体としては非連続でバラバラな挙動を示し予測不可能なこと」とWikipediaにある。

経営もカオスではないのかとふと思う。

いくつかの成功実例だけをあげて、「経営成功の法則」、「経営成功の秘訣」、「経営成功のポイント」などをタイトルにした安っぽい経営書が売られているが、その類のものはあまり信じないほうが良いと思うのはこういう理由だ。

初期条件がちょっと違う(社員が違うし、会社の規模が違うし、業種が違うし、企業文化が違うし、時代が違うし、経営者の性格が違うし、人事制度が違うし、経済環境が違うし、・・・・違うものをあげていったらきりがない)だけで、同じようなことをしようとしたってまったく違った結果になるのだ。

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「古池や・・・・・」


昔は気づかなかったのだが、 「古池や 蛙とびこむ 水の音」 という有名な松尾芭蕉の句はすごいものだなあ、と最近思う。

静寂というものを見事に表現している。

俳句というものは、一切の無駄を排除し、選び抜かれた少数の言葉だけで表現をする。 そういう美学だ。

そういう意味では、マイルス・デイビスのトランペットもそういう美学だ。

「・・・・・・夜の静寂(しじま)の、なんと饒舌なことでしょうか・・・・・・」 (ジェットストリーム、城達也のナレーション) の世界だ。

広告の文とはこうありたいものだ。 商品の独自性を選び抜かれた少数の言葉で言い表したい。

他社も言いそうなことは省き、長々と説明を要するものは省き、・・・・そして研ぎ澄まされた言葉だけで表現する。そういうものは美しいに違いない。

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